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少し前のお話ですが、日本の建築界の重鎮である槇文彦さんがお亡くなりになりました。

竹中工務店の4代目の孫でもあり、登山家槇有恒の甥でもある槇さん。

実は、私の建築人生の初期のころに少しかかわりがあったので当時のことをまとめてみたいと思います。

大学院生時代

私が神戸大学で建築を学び、大学院で引き続き、建築計画を勉強していた時のことです。

新建築という建築雑誌を読んでいるとある建築家の自邸が紹介されていました。

建築家は遠藤精一さん。

エンドウプランニングという設計事務所を渋谷代官山のヒルサイドテラスで、開かれていました。

新建築によれば遠藤さんはエンドウ総合装備という造作家具の工場を川崎市で経営。

早稲田大学で建築を学ばれ、当時すでに国際的に活躍されていた槇文彦さんの事務所に就職されました。

そこで建築を学ぶ予定が、エンドウ総合装備を経営されていたお父さんがなくなられます。

急遽、槇事務所を退社し、家業を承継することに。

川﨑のエンドウ総合装備を経営しながら、1っ級建築士事務所エンドウプランニングを立上げ、

槇事務所が長年係ることになる代官山のヒルサイドテラスに事務所を開いていました。

当時、実家の家具店を継ぐか、建築設計の道を歩むかまだ定まってなかった自分は、

家具と建築の双方を進んでるエンドウプランニングにあり方に大変興味をもち

当時、大学院の研究室の同じ学舎にあった重村研究室の重村先生にその話をしました。

重村先生は、早稲田の吉阪研究室の門下生。

象設計集団をいう設計事務所の創設者の一人でもあります。

重村先生のパートナー有村桂子さんが代表となり、神戸の元町で象設計集団いるかアトリエ（TeamZ00いるか）を主宰されており

自分も、そちらでバイトをし、模型製作などのお手伝いをしていました。

重村先生に雑誌「新建築」みたエンドウプランニングのことをはなしすると

「遠藤さん、俺の早稲田の先輩だから紹介してやるよ」

という、思いがけない声が。

急遽、夏休みを使って2カ月ほど上京し、エンドウプランニングでアルバイトをすることになったのです。

アルバイト時代

当時のエンドウプランニングでは槇事務所関連の仕事が多く

個人の住宅やYKKの社屋、慶應義塾大学関連の仕事の中の家具工事も請け負っていました。

バイトして与えられた仕事が、当時、富山県黒部市に建設中であった吉田金属工業（YKK）の前沢ガーデンハウス。

そのロビーに置く、家具の製作図面の作成の原寸模型の制作でした。

家具の意匠設計は当時住宅建築で有名だった宮脇檀事務所につとめ、

一時、エンドププランニングにも籍を置いていた家具デザイナーの藤江和子さん。

藤江さんは、同じヒルサイドテラスに入居し、何度か事務所を訪れてはデザイン画をもらい、

製図板で原寸パーツ図をつくり、スチレンフォームを切りだして原寸模型をつくりました。

幾夜か事務所に寝泊まりして完成した原寸模型。

ついに槇さんのチェックを受けることに。

抱えるほどの大きさの模型を槇事務所に持ち込み、緊張して待つこと数分。

見るからに紳士なたたずまいの槇先生登場。

眼鏡の奥の目が厳しく、じっと模型を見つめ、何点か質問された後、最終的にはOKがでました。

エンドウプランニング時代～現在

バイトを終え、いったん神戸に帰り、就職の時期になって再びエンドウプランニングにお世話になることに。

設計事務所の1年生所員として本格的に建築設計の業務がはじまりました。

エンドウプランニングでは槇事務所関連の仕事も多く、槇事務所の手掛けた住宅に造作キッチンの仕事も担当。

私の最初のキッチン設計の経験でした。

住宅は大林組の施工。

定期的に進捗会議があり、現場監督の大変さを垣間見ることもありました。

当時のエンドウプランニングは造作家具で部屋を間仕切り、使用用途の変更したがって、間仕切りもかえれる

ウォールシステムを開発しており、その関連で住宅の造作収納家具の設計や工場立ち合い、施工立ち合いなども行い、

最終的にはある商社の会長さんの別荘の新築工事を設計から現場管理までさせていただきました。

小規模な事務所だからこそ、家具、キッチン、住宅と幅広く経験を積むことができ

いまの仕事の基礎を覚えることが出来たのは大変幸運なことでした。

その後、実家に帰り家具の実務を経験後、リーフを創業。

家具キッチンから住宅までワンストップで扱うようになった原点が槇事務所との仕事でした。

建築人生の最初のころにわずかではありましたが槇先生とのかかわりを持てたのはささやかな誇りでもあり、一生の思い出です。

建築家にかぎらず、世間には知名度が増すと、政治や経済な祖、他の分野に口を出す人も多い中、

槇さんの建築を真摯に追求する姿は私が尊敬するもう一人の建築家、谷口吉郎と通じるものがあります。

唯一、晩年に国立競技場のザハハディド案に反対し、見直しの流れをつくったことが驚きでした。

終生、建築界の紳士であり続けた槇さん。

端正なディティールはいまでも魅力的です。

常に学びを続けていきたいと思います。

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株式会社リーフ　代表　猪倉　厚
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