architectural-tour
1級建築士で宅建士、リーフアーキテクチャの猪倉です。
お盆休みは13日から17日まで頂き、高知県の栢島へダイビングに行ってきました。
最終日の昨日17日は移動だけだったので、香川県さぬき市に立ち寄り、大串半島にこの6月に完成したばかりの堀部安嗣さん設計「時の納屋」を訪れました。
その時の様子をブログにまとめました。
香川県さぬき市の瀬戸内海に突き出すようにある大串半島。
正面には小豆島をはじめ瀬戸の島々が眺めることの出来る絶景スポットです。
バブル期には多くの観光施設が建てられたようですが、その後の観光客の減少に伴い赤字が常態化。
閉鎖された施設も多く、地元ではかっての賑わいを取り戻すべく、再開発の声が高かったようです。
このような事態は私の地元の大阪はじめ、全国いろんな町でありましたね。
再開発するにあたり、これからの未来を見据えていかに持続可能な施設としていくかは
全国の多くの自治体が抱える課題ではないでしょうか。
そんな中、さぬき市が考えたのはいかに自然と人工物を調和させるか、というコンセプトだったようです。
地元を巻き込んでこの事業に対する取り組みはこちらでもまとめられています。
到着したのは8月17日の午後2時ごろ。
この週はずっと晴天が続き、この日もとても良い天気に恵まれていました。
駐車場は一般のものと、バリアフリー用のものと2カ所あり、一般駐車場からはなだらかなスロープを上るアプローチになります。
通路はコンクリートやアスファルトで固められているのではなく、この地域で取れた石を敷き詰めています。
その敷き詰め方も、あえて荒っぽくしている通路と平滑に敷かれた通路の2本あり、平滑な方は車いすの利用などを想定されているようでした。
両側の植栽は芝生に、杉の苗が植えられています。
これからススキも植えていき、地域在来種での茂みを作っていくようです。
段差もコンクリートやブロックなどでなく、石を積み上げたり、法面にしたりして、出来る限り人工物を取り除き、自然の状態にしていこうという意図が感じられました。
そんなアプローチをたどっていくと、徐々に「時の納屋」が姿を現してきます。
自然に作られたアプローチ。
上空に広がる青空。
とても穏やかで深い青を湛える瀬戸内海。
その空と海の境界に現れてくる「時の納屋」はまるでずっと前からそこに存在するかのような趣を持っていました。
到着したところでまずは外観のデザインから見学していきます。
外壁は地元の杉を無塗装で大和張りで貼られていました。
垂木や庇を支える母屋、桁、柱もすべて無塗装の無垢杉材。
基礎の立上りコンクリートは極力地中に埋め戻されて、ほとんど姿を現していません。
外観で特徴なのが軒頂部の越屋根のデザイン。
実は、これ、さぬき地方に多く存在するタバコの葉の乾燥小屋(ペーハ小屋)をモチーフにしたものという事でした。
もちろん機能的にも、効率的な自然換気として働きます。
また、この越屋根には太陽光発電パネルが設置されていて、電気も一部自給できるようになっていました。
太陽光パネルは景観や見た目上、意匠優先の建築とは相性が悪いことがありますが、こちらの場合は角度の関係で、ほぼ見えない部分に使われており、機能とデザインをうまく両立されていました。
玄関のある東側から見た外観がこちら。
デザイン上、大きな部分を占める屋根には淡路瓦が使われています。
越屋根に載っている太陽光パネルよほど注意深く見ないとその存在に気が付かないようになっています。
南側の外壁の様子。
無塗装の大和張りの杉板です。
あと10年ぐらいたつと経年変化でシルバー色に変わっていくでしょう。
その頃にもう一度、訪れてみたいです。
次に室内のご紹介。
室内はカフェとして営業されており、この日も多くのお客様でにぎわっていました。
見上げると挟み梁でくみ上げられた大空間です。
まるで大寺院の伽藍のような迫力でした。
照明器具も露出させず、挟み梁の間にうまく配置されていました。
この手法は、高知市にある竹林寺納骨堂のダウンライトの納め方にも通じるところがあります。
また、室内壁には杉の羽目板があるのですが、階層ごとに板の目をそろえ、単調にならないようにデザインされていました。
全て同じ杉材を使っても、赤身の部分と白身の部分のはいり方で貼る面を区別しています。
床に目をやると、板の張り方にもこだわりが。
1間ごとに建てられている柱のグリッドに合わせて、床材を貼り分けられていました。
この日はすばらしく天気が良く、南側の大開口からは正面に小豆島が。
その周りをとても穏やかな瀬戸内の海が囲み、その上には青空と、最高の景色に恵まれました。
時が流れて訪れる人が変わっても、この建物と目の前の風景は悠久に続いていく。
そんな時の納屋の意図する空間が出来上がっていました。
カフェでおいしいすももジュースを頂いて、ゆっくりとくつろいだ後、外に出て、建物の周囲を歩いてみました。
建物南側には目隠しの石組みが。
これもコンクリートなどではなく、石を積み上げて作られています。
裏手に回り、バリアフリー用駐車スペースに回ると傾斜地に建てられたこの建物の様子がよくわかります。
西側の大屋根は斜面に沿って下へ流れ、建物が大地に埋め込まれているかのように作られていました。
建物玄関方向へ上る階段も石組み。
擁壁も金網に囲まれた石組み。
極力人工物を使わないこの手法。
先ほどのアプローチから徐々に建物が姿を現すランドスケープデザイン。
どこかで見た手法だなあと、調べると、やはりこの方でした。
建物西側の正面。
淡路瓦で葺かれた大屋根がきれいです。
建物南面の斜面部分。
自然の地形に逆らわず、素直に大地に寄り添うようにデザインされています。
ランドスケープをしっかりデザインされている外構や植栽は、完成時に作りすぎず、時の流れとともに、かってここにあった風景になるように考えられています。
この杉の苗木が育ち、森になった時に初めて完成を迎えるのでしょう。
正面に大きく見える小豆島。
その間に挟まる瀬戸内海はとても静かで穏やかでした。
抜けるような青空と相まって最高の風景でした。
今までの自治体主導の施設というといわゆる「ハコモノ」と揶揄されるように、完成時には華々しく迎え入れられるものの、その後維持管理が難しくなり、やがて人も訪れなくなって、取り壊されていく、というパターンが多かったように思います。
この「時の納屋」はその反省を生かし、地元の方にも観光で他府県から訪れる方にも長く愛され、育ち、長い時間と共に完成していく。
また、空から降ってきたような建築ではなく、深く当地の風土と歴史を理解し尊重して、その素材と共に建築に取り込んでいく。
「長く愛される建築とはなにか」という大切な命題に対して一つの回答をこの建物は示しているのだと思います。
我々が建てる建物は一般住宅がメインですが、この考えは住宅にも十分に通じると感じました。
この大串半島活性化事業の取り組みについてはさぬき市のHPで詳しく解説されています。
特に、景観設計と建築設計のコンセプトや技術指針はこちらのファイルにまとめられています。
このブログでも参考にさせていただきました。
ありがとうございました。
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