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リーフが良くわかる

新住協全国総会に行ってきました

新住協全国大会

1級建築士で宅建士のリーフアーキテクチャ代表、猪倉(いくら)です。

さる10月の3日、4日と香川県の琴平に行ってきました。

弊社の所属する、新住協(一般社団法人新木造技術研究協議会)の全国大会へ参加するためです。

全国大会では、総会で昨年度の事業報告と今年度の事業計画が発表され、その後、各会員から事例の発表。

翌日は、実際の現場を訪れるという、学びの場です。

コロナの間は全国大会も中止になっていたのですが、再開された昨年の青森大会に続き、今年も参加してきました。

昨今はネットやSNSなどで遠いところの人とも交流できる環境がありますが、やはり、時間をかけて行動し、実際に会って、酒も酌み交わしながらいろんな話を聞くというのは一番の刺激にもなります。

今回も実りある2日間となりました。

その様子を少し報告したいと思います。

JR琴平駅

瀬戸大橋を渡って琴平へ

会場になった琴平は車で行っても3時間程度の距離。

車で行こうか電車で行こうか迷ったのですが、久しぶりに瀬戸大橋を渡るマリンライナーに乗ってみたいという想いもあり、早朝の新幹線で岡山へ。

快速マリンライナーに乗り替えて坂出から目的地の琴平に無事到着しました。

朝ご飯を食べようとしたけど駅前は何もなく、賛同を歩いていると喫茶店が。

こちらでモーニングを頂き、ほっと一息。

そのまま、会場である琴平温泉琴参閣へ。

いままで、いろんな勉強会で見知った顔と再開してご挨拶。

しばらく求刑しているといよいよ総会の開始です。

マリンライナーで渡る瀬戸内海は雨模様

1日目:総会と研修会・交流会

第10回通常総会

11時から始まった総会。

昨年度の事業報告と会計報告、今年度の事業計画と予算が発表されました。

新住協の一般会員(工務店などの実務者)は、2024年7月末段階で全国788社。関西だけでも103社あります。

しかし全国で788と言っても、その中でQ1住宅の施工実績のある、いわゆる「Q1住宅マスター会員」は131社。案外少ないんですね。リーフアーキテクチャはもちろんこの中に含まれています!

さて、新年度の事業計画はいくつか出されましたが、目立ったところは

「全棟Q1住宅レベル3建設」

こちらは基調講演でも取り上げられたので後ほど詳しく書きます。

また、断熱性能が高まれば重要になるのが冷暖房計画。

ローコスト快適暖冷房システムのマニュアル化も方針として打ち出されました。

総会が終わった後、昼食休憩をはさんで、いよいよ研修会が始まります。

基調講演

発表者:新住協理事 鎌田先生

スタートは新住協の理事、鎌田先生。昨年まで代表理事を務められていた「新住協の顔」です。

基調講演の趣旨としては会員は全棟Q1住宅のレベル3を目指そうというお話でした。

最近、断熱性能というとUa値ばかりが取り上げられていますが、Ua値が良いからと言って本当に快適な住まいになるとは限りません。(前ブログ参照

QI住宅レベル3についてはこちらの解説を。

また、昨今の建築費の高騰や地価の高騰を受けて、注文住宅の土地込みの価格はますます高くなっています。

いくら性能を良くしても多くの人の手に届かなければ意味がないという事でいかにして高性能でありながらローコストに作るかというお話もありました。

具体的には平面計上が凸凹のない、総2階建てで計画するという事。

ただ単に総2階にしてしまうと、味気ないデザインになってしまうので、屋根形状、外壁素材、などを工夫して、いかに魅力的なデザインにするかという課題も唱えられました。具体的には延べ床面積30坪~32坪で納まる総2階建てのプランの発表がありました。

リーフでも最近は28坪~30坪程度の面積で総2階が多く、これからもその傾向は続くであろうことから大変参考になるお話でした。

鎌田先生の基調講演

事例発表

鎌田先生の基調講演のあとは中四国支部を代表して4名の方の事例発表がありました。

発表① 瀬戸内の風土に合わせた夏の高断熱住宅

発表者:川西工務店 川西さん

最初の発表は地元、さぬき市の川西工務店さん。自宅兼モデルハウスの報告でした。小屋裏エアコンの運用についてのお話が有りました。平屋のお家という事で、ダクトなしで全館空調はなかなか難易度が高いのですが、様々な工夫をされていました。

発表② 都市部におけるQ1住宅の設計事例紹介

発表者:鈴木アトリエ 鈴木さん

新住協理事で、東京で設計事務所を営まれている鈴木さんの発表は、延べ床面積約30坪の住宅での空調計画の発表でした。Ua値0.27、Q値0.81、C値0.2と十分な性能を持つ高断熱高気密住宅を家庭用エアコン2台(1階床下エアコンと2階ホールエアコン)を使っての全館空調。この方式で一番重要なエアコンへのリターン経路を巧みな設計で解決されていました。

また、補足として、フィンランドにアアルトの建築を見に行った時のご報告もあり、総2階をベースにどのように立面に変化を加えてデザインを良くしていくかの事例も発表してもらいました。

発表③ 蒸暑地での高断熱住宅への取り組み

発表者:新協建設工業株式会社 澤田さん

3番目は広島の新協建設の澤田さん。2014年に広島を襲った豪雨災害からの復旧事例をいくつかご紹介いただきました。床下浸水、床上浸水した時の躯体や断熱材の補修方法はなかなか経験している方でないとわからないもの。大変参考になりました。また通常の新築住宅における施工の様子を豊富な写真と共に、ご紹介いただき、これらの事例でも家庭用エアコンを工夫して全館空調にしている方法を数多く教えていただきました。

発表④ オープンジョイント木外装の防火認定解説

発表者:新住協代表理事 久保田さん

事例発表の最後は代表理事の久保田さんから、現在、大臣認定取得手続き中のオープンジョイント構法の説明がありました。

オープンジョイント構法とはファサードラタンとも呼ばれ、外装材に木材をすのこ状に張ることによって、通気性を向上し、外壁の耐久性を伸ばしていく方法で、ドイツなどでは一般的に採用され、ホームセンターなどでもそのパーツが販売されているという事です。

ただ、防火規制の厳しい日本においては木質外装のハードルが高い。何年か前に、北総研さんが付加断熱を前提とした木質外装の防火認定を取得されて、リーフでもこの認定を使い、最近は何物件か準防火地域でも木質外装を実現しています。

しかし、この認定は木の外装を隙間なく張るという事が前提で、オープンジョイント(ファサードラタン)のように目透かし張りでは認定がとれていませんでした。

それを今回、実物模型を作って燃焼実験をすることにより、大臣認定を取ろうとしているという事です。こちらが実現すれば、準防火地域でも木質外装のデザインの選択が一気に増えます。認定が大変楽しみですね。

ファサードラタンの事例

交流懇親会

研修会のあとはゆっくり温泉につかり、その後、お楽しみの交流懇親会。

研修会では聞けなかった気になっているところを直接聞きに行ったり、普段なかなか会えない人と、お話をして情報交換したりと、大変貴重な場です。

最近は、ZOOMなどでのリモート参加も可能になっていますが、やはりリアルの対面に勝るものはないですね。

2次会まで建築談議が途切れることはなく、琴平の夜は更けていくのでした。

2日目:工場見学と現場見学

「佐藤の窓」工場見学

翌朝はバスツアー。1件目は国内産高性能木製サッシュで有名な「佐藤の窓」の大丸工業さん工場見学です。

広い工場の中では最新域の機械が据え付けられ、本当に手仕事で一つ一つ、木のサッシが作られていました。

価格もそれなりにしますが、性能はぴか一。とくにパッシブハウスの認定を取ろうとするともはや必須のサッシかもしれません。

弊社ではまだ採用された現場はありませんが、機会があればぜひ採用したいものです。

工場を出たらなんと讃岐うどんの振る舞いが!

今回は時間に余裕なく、うどん屋さんに行けなかったのでありがたかったです。

のど越しつるんつるんでとてもおいしかったです。

ありがとうございました!

「パッシオパッシブ」モデルハウス見学

工場を出た後は、モデルハウスの見学に。こちらは「パッシオパッシブビレッジ」と呼ばれ、高性能住宅が芝生の敷地の中に

広大な敷地に5件余りのモデルハウスが建てられていました。どれも性能はパッシブハウスクラス。

ドイツ製の木製サッシも使われ、室内も天然木や自然素材をふんだんに使い、とても素敵な空間になっていました。

モデルハウス

沢山あるモデルハウスの一部には、昨日の発表会でも取り上げられていた、ファサードラタンの実例がありました。

この写真は横張ですが、今回、大臣認定の取得予定なのは縦張りに限るとのこと。法の規制はなかなか厳しいですね・・・

ファサードラタンの目透かし

「ハウスプロジェクト」リノベ現場見学


大丸工業さんを出た後は、次の見学先、リノベーション現場へバス移動。

地元の工務店、ハウスプロジェクトさんの築18年の平屋を性能向上リノベーションされている現場でした。

現場内はとてもきれいに整理整頓されていました。

上を見上げるととても立派な梁が。おそらく地元で採られた地杉でしょう。これらを取り壊すことなく、再利用して次世代に引き継いでいくのがリノベーションの使命ですね。

まとめ

2日間の短い日程でしたが、年に1度、日本全国から高断熱高気密住宅を手掛ける実務者が集う場は大変刺激的で有意義でした。

来年、2025年4月より建築基準法が改正され、ようやく断熱基準義務化が進む中で、ハウスメーカー、工務店問わず、全体に高断熱高気密性能の底上げが始まっています。

当然コストも嵩んでいく中で、価格が上がりすぎて手が届かないという現象も出てきています。

また、現在の断熱性能の国の基準がUa値のみを使っているため、本当に段冷房費の削減につながるのかという問題もあります。

加えて、高性能なればなるほど、空調計画の必要性も増します。断熱性能が良くなり、エアコンがすぐにサーモオフしてしまい、思ったより冷えない、湿度が高くてジメジメする、というトラブルも見聞きします。

エアコンを使った全館空調も小屋裏エアコンで空調室内が結露するといった話も聞きます。これらを考えると、今後の高性能住宅の家づくりの要点は、

  • 断熱性能はQ1住宅レベル3を目指す
  • コストを抑えながらデザイン性を高める総2階建ての開発
  • 高性能住宅にふさわしい家庭用エアコンを利用した空調計画

の3点にまとめられるのではないかと考えます。

これ、すなわち、今回の新住協全国大会でのテーマでもありました。

共に学ぶ工務店さんたちとますますブラッシュアップしていくことを思いながら帰阪の路につきました。

瀬戸内海を渡るマリンライナー

おまけ

坂出駅を出たのが12時半ごろ。

マリンライナーと新幹線を乗り継いで大阪には15時ごろには到着しました。

遅くなったお昼ご飯を食べるのに、私の故郷である新世界へ。

いつも訪れる串カツ屋さんに。

2度漬け禁止!

おいしい串カツをごちそうになった後はジャンジャン横町を南下。

阪神高速の下を潜り抜けて、上町台地に上る階段の袂の広場に。

実は、ここが弊社の創業の地なんです。

昭和22年、終戦直後の混乱期に私の祖父がこの地に開業した木工所が弊社の原点です。

この場所にあった木工所で祖父は当時まだ珍しかったソファのフレームを堀江の材木商から仕入れた板から切りだして製作していました。

小さい頃、赤と青の2色平色鉛筆を耳に挟み、木取をしていた祖父の記憶があります。

工場は私が中学生の頃、火事で全焼して廃業となり、その頃はすでに現在の大阪狭山市で家具店を営んでいた父や私たちと同居をするんですが、この工場では、その後、大阪の家具メーカーを興していく青年たちが働いていました。

創業の地

この工場のあった西成区の山王町は、戦後は負のイメージがありましたが、祖父によれば戦前はとてものどかで良い街だったらしく、この上町台地に上がる階段で、芸人や音楽家の卵が練習を重ねていたという事でした。

祖父の工場の向かいにあった長屋にはその後、大阪のお笑い界をけん引していくような芸人さんたちが暮らしていたという事です。

大阪を代表する作家、難波利三さんによればこの芸人さんが集うこの辺り一帯は「てんのじ村」と呼ばれ、地域の人から親しまれていたという事でした。

思い出の地から地下鉄の駅に戻る途中にその「てんのじむら」の顕彰碑がありました。

家具をルーツに持ち、現在は家具、キッチン、住宅と手掛けている弊社ですが、そのルーツは常に忘れないようにしたいと思います。

「てんのじむら」顕彰碑
関連記事(リーフの家具部門 Leaf Village のHPへリンクしています)

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