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1級建築士で宅建士、リーフの猪倉です。
すでにご存じの方も多いかと思いますが、本年2025年4月に建築基準法が改正され、「省エネ基準の義務化」と「4号特例の廃止」「構造計算基準の見直し」が実施されました。
その影響で建築確認申請には以前より多くの計算・書類が必要となり、現場も大きく変わろうとしています。
申請の期間が2か月以上に伸びるケースもあり、実際に当社でも着工が遅れる状況が出てきています。
今回は、この法改正が家づくりを考えている方にどんな影響をもたらすのか、特に「省エネ基準の義務化」に焦点を当てて解説したいと思います。
住宅の断熱性能を表す指標として、「断熱等級」というものがあります。数年前までこの断熱等級は1から4まであり、数字の大きい方がより断熱性能が高くなります。2022年にはさらに上位の等級5,6,7もできて、高性能住宅を造る際の目安となっています。
今回の2025年4月の改正では、すべての新築住宅に対して「断熱等級4以上」の断熱性能が義務付けられました。これまで日本では、たとえ断熱材が一切入っていない住宅でも建築基準法違反にはならず、建築が可能でした。ですが今回の改正により、一定の断熱性能がないと建築許可が下りなくなります。
日本の住宅は、長年「寒くて暑い家」が当たり前のように建てられてきました。その背景には、戦後の住宅不足や、量を優先した政策があります。「雨風をしのげれば良い」という価値観のもと、断熱や気密性は軽視されてきたのです。
一方で、WHO(世界保健機関)は冬季の室温を18℃以上に保つことを健康の観点から推奨しており、欧米諸国ではこの基準を満たさない住宅は建てることができません。こうした国際基準と比べ、日本の住宅性能がいかに遅れていたかがよく分かります。
2022年に日本でもようやく断熱等級5〜7が新設されました。それまでは等級4が最高だったため、大きな前進です。ただし、現在の断熱等級の評価は「外皮平均熱貫流率(Ua値)」のみを基準にしており、熱交換換気や日射取得などは評価に含まれていません。それでも、室内温度を18℃以上に保つには、最低でも断熱等級6、理想は等級7が必要とされており、ようやくスタートラインに立てた段階と言えるでしょう。
今回義務化されたのは「断熱等級4」ですが、これはあくまで最低基準。2030年には「断熱等級5」が最低基準になることがすでに決まっています。さらに、2040年にはZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)の定義が見直され、現在の「断熱等級5+一次エネルギー消費量20%削減(BEI 0.8以下)」から、「断熱等級6+35%削減(BEI 0.65以下)」が求められるようになる予定です。
これは、現在の大型補助金「GX志向型住宅」が示している水準と一致しており、2050年のカーボンニュートラルを見据えた政府の明確な方向性でもあります。将来、間違いなく住宅の断熱性能の法的義務レベルが高くなっていくことは明白なわけです。今なら断熱等級4で建てられますが、それは2030年には「既存不適格建築物」となってしまう可能性があります。
「既存不適格建築物」とは、建てた当時は合法だったものの、法改正により現行基準では適合しなくなる建物のことです。今回の法改正では大規模なリフォームでも確認申請を求められる範囲が広がりました。たとえば、将来リフォームや増築を行う際に確認申請が必要になると、新基準に合った断熱改修を求められ、費用が大きくかかる可能性もあります。
長く快適に暮らす家を建てたいと考えるなら、今の「最低ライン」ではなく、将来を見据えた基準で家を建てるべきです。住宅は、さまざまな人の手と材料によってつくられる大きな資産です。せっかく建てるなら、次の世代、できれば孫の世代まで使い続けられる住まいにしたいものですね。
欧米の都市では、外観や構造はそのままに内部をリノベーションして住み継がれている建物がたくさんあります。街並みに溶け込んだ建物は100年以上使われている例も珍しくありません。日本でも、建てる時点で高い性能を備えた家なら、将来の価値や資産性も高まります。
ここまでお話ししてきた断熱性能ですがこれを示す断熱等級はUa値といいう設計時点での計算によって求められるものです。机上の計算によって出されたもので、「現場が正しく図面通りに施工できているか」というところは判定できません。大切なのは設計通りの施工が丁寧にされているかという点です。
この施工精度とかかわりがあるのが気密性能になります。気密性能はC値という数字で表され、1.0を切るのが高気密の目安となります。高断熱高気密住宅を目指すなら0.5以下には押さえたいところです。この気密性能は現場で実測する実測値になります。0.5以下というのは意識して丁寧な施工をしないと出せない数字です。
また気密性能以外にも、第3者に工事中のチェックをしてもらう「第3者監査システム」という制度もあります。これらも高性能な住宅を建てている住宅会社を選ぶ目安といえます。
2025年4月から建築基準法が改正され、省エネ基準(断熱等級4)義務化がスタートしました。しかしこれは家づくりの「最低基準」であり2030年にはさらに高い基準にひきあげられ、現在ギリギリ水準で建てる家は将来の負担になるかもしれません。長く快適に暮らすためには「30年先も住み続けられる家」を目指しましょう。具体的には「GX志向型住宅」レベルの性能を目安にすることがおすすめです。これからの家づくりのご参考にされてください。
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